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  • 2013/09/26

【連載】誰も悪くないのに「勉強しない大学生」が生み出されるメカニズム(2)

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「負のスパイラル」の元凶とは

私は前頁のような状況を就活と教育の「負のスパイラル」と呼んでいます。(下図参照)

 

元凶になっているのは、

社会全体の大学の成績に対する期待感の低さ、信頼感の欠如

です。

企業は、大学の成績を信頼していないから参考にしない。学生は、大学の成績を上げても何も得をしないため、成績に対する期待感が低い。大学教員も厳正に成績を評価する必要性を感じていない。

このように当事者三者、もっと言えば社会全体の大学成績に対する信頼感のなさが、「負のスパイラル」を起こし続けています。

このスパイラルを繰り返していくことにより、日本の大学生の学力はどんどん下がります。ただでさえ日本の経済が停滞し、大学進学率上昇に伴い大学生の希少価値は低くなりつつあります。国内に限らず、アジア各国でも大学生の数は急上昇しています。

そんな中で諸外国の学生は目の色を変えて勉強しているにもかかわらず、日本の学生は授業に出てもスマートフォンをいじっている状態です。こうして海外と日本の知的能力差はますます広がっていきます。

なぜ負のスパイラルはなくならないのか

なぜこのスパイラルはなくならないのでしょうか。

それは「当事者がなんとなく楽で幸せ」な状態だからです。

学生にすれば、勉強するより課外活動にいそしんでいた方が面白いはずです。それが就職活動において役に立つのならなおさらです。

学校の先生からしても、時間を割いて学生の指導に尽力するより、毎年なんとなく同じ授業をしていた方が楽です。ましてやその方が自分の研究に時間を割くことができます。

企業の採用担当者側からしても、既に確立している採用方法に則ったほうが安心して採用活動にとりくむことができます。

つまり、当事者である3者(特に学生と先生)にとっては、今がぬるま湯のような状態になっているのです。

だからこそ、こうした状態が何十年も続いてきました。

しかし、アジア近隣諸国が圧倒的成長を誇る現在、日本の学力が低下している状態は非常に危険な事態です。

「負のスパイラルを改善するためにはどこから手をつければいいのか

では、負のスパイラルを改善するためにはどこから手をつければいいのか、考えてみましょう。

学生に「もっと勉強しろ」というメッセージを送る

これでうまくいけばたいへん美しいのですが、残念ながら期待薄と言わざるをえません。ご自分に当てはめればわかっていただけると思いますが、私も含め多くの人間は、楽しくもなく、何の得もない行動を続けられるようにはできていません。

メッセージを送っただけでうまくいくと考えるのは、牧歌的にすぎます。

大学の先生を変える

大学の先生を評価し、きちんと指導・評価していない先生をクビにする。あるいは単位認定を厳しくし、きちんと勉強しない大学生は卒業できないようにする。このような改革は、たしかに一定の効果をもたらしそうに思えます。

ですが、私にはあまりうまいやり方だとは思えません。

その理由は、規制強化による改革には、多くの抜け穴があることです。

たとえば大学の先生を評価するとなった場合、その評価基準をどう決めるのでしょうか?学生へのアンケートで決めればよさそうですが、残念ながら現時点の学生は「楽に単位をくれる」先生を評価し、厳しい先生に悪い点をつけるでしょう。

また、単位認定を厳しくするという方法にも、学生をどういった基準で評価するのかという問題があります。

たとえば、膨大な量の暗記をしないと単位が取れないようにすれば、たしかに卒業は難しくなります。ですが、ただひたすら暗記をしてきた大学生を欲しがる企業はありません。

企業から変えていく

そうなると、企業から変えていくしかありません。これまで日本の大学教育をさんざんやり玉に挙げてきましたが、実は、大学の先生の中には、きちんと授業に力を入れ、評価を適正に行っている方も多くいらっしゃいます。ですので、そういった授業の成績は、本来企業の採用の参考にできるはずなのです。

負のスパイラルを早く解決するには、企業が成績を活用することが一番

なのです。

問題は、どの先生がきちんと授業や評価をしているのか、企業側には情報がないことです。先生の研究業績は調べればわかりますが、授業への熱意を知る方法はありません。大学の授業はまさに玉石混淆。「悪貨は良貨を駆逐する」理屈で、企業はすべての成績を信頼できなくなっているのです。

だったら、どの授業が採用の参考にできるのか調べて、企業に情報提供すればいい。

そう考え、就活の「負のスパイラル」を解消することを目的に私はNPO団体「DSS」を立ち上げました。そして、2つの活動に取り組んでいます。

1つは、各大学の授業調査・選定作業です。採用の参考に値する授業、つまり学生の力を伸ばしている授業を公表し、企業が面接時に「この学生はどれほど実のある授業に注力してきたのか」と判断できるよう、情報提供をしています。

この結果は、弊団体HP http://www.npo-dss.com/research.html上でも公表しています。自分の大学・学部のどの授業が企業側から評価されているのか一目で分かるので、学生の方もぜひ授業の履修選択時に参考にして下さい。

もう1つは、学生の成績表を統一のフォーマット・統一のGPA的な平均点の算定等をして、企業にとって編集しやすいデータで企業に提供するサービス(通称:DSS大学成績データサービス)を企業に提供することです。
これによって、少しでも企業の成績活用の負担を下げ、成績活用しやすくなるよう図りました。

このように、企業が大学成績を活用化しやすい土壌を整えています。

 [次頁] 企業が大学成績を活用化すると、負のスパイラルがどのように変化していくか

著者:辻太一朗

1959年生まれ。京都大学工学部卒業。
(株)リクルートで全国採用責任者として活躍後、99年(株)アイジャストを創業。2006年(株)リンクアンドモチベーションと資本統合、同社取締役に就任。
採用コンサルタントとして延べ数百社の企業を担当。数多くの大学で講演、面接トレーニングの実績ももつ。

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