埋まらない!?企業と大学生の認識の差!
就活について、誰でも1度は考えたことありますよね。ではいざ”就活を始める”となったとき企業側が「こういう人間が欲しい!」とする力を身につけていると有利になるとは思いませんか?しかしベネッセの発表によると、企業と大学生の間には学生が不足しているとする能力に大きな差があることが分かります!
・大学生自身が自分たちに不足していると考える力:簿記・PCスキル・語学力・業界に関する専門知識
・企業側が学生に求める力:主体性・コミュニケーション力・粘り強さ
このように学生自身は自分たちに”知識面”が不足していると考えています。一方で企業側は”社会人としての姿勢や基本的な振る舞い”が大学生には欠けている、と指摘していることから両者の意識に差が見られます。そこでベネッセは企業が求める能力かつ学生側に不足している力として特に”主体性・問題解決力・継続的な学習力・チームワーク力”の4つを挙げています。現代の学生はこれら4つの力を養える教育を高校時代には受けてきていないようです。また大学入学後も授業でこれらの力が十分に養えているかと言うと、そうでもありませんよね。
今回は、この4つの能力の内の1つである「主体性」を養うために、多くの学生が週に数時間以上は経験するであろう”あの事”が役立つという論文を紹介したいと思います!
企業から見て大学生に不足してる「主体性・問題解決力・継続的な学習力・チームワーク」。これらは多くの大学生が経験する「あの場所」で育つ!
「主体性がある」と言える人になるためには?!
企業が必要としている力の1つに主体性があります。しかし大学の授業だけで主体性を身につけるのは、確かに難しいことも確かです。講義形式の授業がほとんどで自らを積極的にアピールする場のない人も多いでしょう。そこで今回は「アルバイトが主体性を養う場となる!」という大阪大学教授の関口倫紀氏の意見を見ていきたいと思います。
(参考論文:「大学生のアルバイト経験とキャリア形成」関口倫紀,2010)
1.アルバイトは経験値となる!
日本では大学生の9割が卒業までに何らかのアルバイトを経験しています。また大学生のアルバイト先の上位を占める外食産業や小売業は正社員に近い仕事をアルバイトに任せたり、リーダー的な役割を担うこととなる「基幹労働化」も進んでいます。このようなことからアルバイトの占める位置は重要だということが分かるでしょう。また大学生のアルバイト経験は社会や就きたい職業等について考える機会になるのです!
【大学生が就職や社会についてアルバイトを通して考える項目】
・希望する職業へ就くことへの「コミットメント」
・自分がどんな職業にむいているかを知る「キャリア焦点」
・ある状況下で自分が任務を達成する自信があるかという「自己効力感」
例:スターバックスやマクドナルドで考えてみよう!
スターバックスやマクドナルドはアルバイトを多く起用することで有名です。このような社会人と同じような経験を積めるアルバイトではコミットメントやキャリア焦点・自己効力感等を感じやすいのではないでしょうか?
(出典:Masashi Yanagiya)
スタバの場合
アルバイトとして仕事をこなしていく中で、
・新人教育を受け持つことの出来る”バリスタトレーナー”
・認定試験に合格したコーヒーに関する専門知識を備えた”ブラックエプロン”
・一定の時間帯の責任者である”シフトスーパーバイザー(時間帯責任者)”
にレベルアップが可能となります。正社員や社会人に近い教育や管理・責任作業をアルバイトが行うことでより多くの経験を積むことが可能となります。
(出典:スターバックスのアルバイトって? スターバックス コーヒー ジャパン)
マクドナルドの場合
アルバイトをしていく過程で、
・アルバイトが力を発揮できるようサポートする”トレーナー”
・チームリーダーの”スウィング・マネージャー”
・接客やサービスのスペシャリストである”スター”
等になることが可能です。スタバ同様に高い意識をもってアルバイトに取り組むことで、責任の伴う職務に就くことが出来るようになります。
(出典:クルーの仕事/職場 アルバイト情報 日本マクドナルド株式会社)
スタバやマクドナルドでは社会人同様の働きが求められるため、アルバイトを通して「自分がどのような職種に関心があるのか」また「向いているのか」をより正確に判断することが出来るでしょう。さらに努力次第でレベルアップが可能なことから、任務達成に対する自信も持ちやすくなるのではないかと思います。
2.1つのアルバイトで5つのスキルを身につける!
アルバイトにはどのような仕事に、どういった姿勢で取り組むのかといった「質的側面」があるようです。質的側面にはいくつかの要素があり、その内の2つは大学生のキャリア形成において効果があるとされています。まずは質的側面の要素の1つである「スキル多様性」についてみていきましょう。
「スキル多様性」とは実際にアルバイトを行う際に必要な技能数を指します。一般的な学生アルバイトでは単純な作業が多いとされますが、そのなかでも社会人として働くために必要な能力は養えるのです。
例:コンビニアルバイトで表す、「スキル多様性」!
(出典:Dick Thomas Johnson)
①品出しや商品陳列等の主な「担当業務・作業」
②他のアルバイトや従業員との「チームワーク・リーダーシップ」
③レジでの接客スキルや商品などに対する「クレーム対応能力」
④どのような商品配置が売り上げを左右するか等の「専門スキル」
➄接客や販売方法を考え改善する「問題発見・問題解決スキル」
これらが1つのコンビニでのアルバイトの中で身につくのです。このような経験が大学生の直接的な職業選択や間接的にはアルバイトで培った考え方や自信に繋がっています。
3.最重要項目は「主体性」!
アルバイトへの取り組みとして特に重要なものは「主体性」です。主体性はとりわけ現代の若年労働者に求められる行動の1つでもあります。経済産業省が提唱する社会人基礎力の中でも、企業が求める一方で学生に不足する力として挙げられているのが「前に踏み出す力」となっています。これは主体性とほぼ同義的です。
そこで質的側面において最も大切となるのが「主体的ジョブデザイン」である、と大阪大学の関口教授は言います。
【主体的ジョブデザインの3要素】
①仕事や作業そのものの改変
②仕事や作業上必要となる人間関係の内容や幅の調整
③仕事や作業に内在する意味あるいは意義の再構築
例:「主体的ジョブデザイン」を大学生のアルバイトに置き換えてみた!
(出典:harpsicello)
①与えられた作業について新たな作業を加えたり作業の順序やスケジューリングを工夫したりして業務の効率性や付加価値を高めようとする
②業務を改善するために多くの従業員や関係者と接触したり、仕事で関わる人々への配慮や便宜を工夫したりする
③アルバイトを単なる時間の切り売りと考えたりせず、仕事そのものに意味や意義を見出すことによって仕事に情熱を傾けたりする
アルバイト業務における「主体的ジョブデザイン」行動は幅広い業務知識やスキル・主体的な職業観の獲得等、将来のキャリアに関わる様々な効果があります。すなわち学生がスキル多様性の高いアルバイト業務に従事することやアルバイト業務において主体的に仕事に取り組むことはキャリア学習やキャリア形成にとって重要な要素であると考えられます!
要は取り組み方にある!
大学内の正規学習プログラムのみでは就職を主体的に考えさせる教育は難しいとされています。そこで正規外のプログラムとしてアルバイト活動に取り組むことには、大きな効果があるのです。現在、注目されているインターンシップや効果的であると思われがちなNPO団体での活動も取り組み方次第では”ただの経験”にしかなりません。
社会人になってからや、就職にはあまり役立っていないと思われがちなアルバイトでも「スキル多様性」や「主体的ジョブデザイン」等を考えて取り組めば十分に、学生の経験値となるのです!
1.「アルバイトで成長したい」という意見多数!
an reportが行った「給与以外でアルバイトに期待することは何か」というアンケートによると以下のような結果になったようです。またこの結果に対しての考察もまとめています。
・アルバイトから経験や知識・スキルを身につけ、自身の成長に繋げたい考えていることがうかがえる
・「将来の就職につながること」を意識している人は13.8%、「将来につながる人脈づくり」を意識している人が8.0%いることから将来を見据えてアルバイトをしている人も多くはないが存在する
(出典:「イメージ」と「意識・行動」 アルバイト採用・育成に役立つ人材市場レポート「an report」)
2.アルバイトは就活に役立ったという説も!
同じくan reportによる内定者座談会では以下のような話し合いがされたようです。
質問1:就活にアルバイトを役立てようと思ったか?
自分が設計か施工のどの分野に進むのかすごく悩んでいた時期があり、現場を見てから判断したい気持ちがありました。そういう意味で意識していたと思います。造園バイトを通して現場に出る楽しさを知ったことで、建設会社の現場監督を目指すようになりました。
【造園系学科に在学する4年生】
今のアルバイト先は、自分がIT業界に合っているのかを確かめるために選びました。実際に働いてみて、プログラミングの面白さを知ることができましたし、好きなことを仕事にしたいと思ったのも、このアルバイト経験があったからです。【ITに関心のある4年生】
(特別企画 大学生座談会 アルバイトは就活にどう影響する? 内定者のホンネ 特別企画 アルバイト採用・育成に役立つ人材市場レポート「an report」)
アルバイトはただお金を稼ぐという事だけでなく、将来的に自分がつきたい職業に対し、その職業がどのようなものかを知るという手段にもなるようですね。
質問2:アルバイト経験は就活や面接で役立ったか?
造園は女性が少ない業界なので、体力面を心配されることが多いのです。造園のバイト先で夏場に必死で働いた作業現場のお話をすると、「体力は大丈夫そうだね」と採用担当者に安心してもらえました。
【造園系学科に在学する4年生】
採用担当者がジャッジするのは、面接を通して「この人間と働いていけるのか?」というイメージができるか。その点、僕はIT企業で働いていた経験から技術的な基礎の話ができる分、一歩進んだステップの話ができていたのかなと。そこを評価してもらえたんだと思っています。
【ITに関心のある4年生】
(出典:特別企画 大学生座談会 アルバイトは就活にどう影響する? 内定者のホンネ 特別企画 アルバイト採用・育成に役立つ人材市場レポート「an report」)
実際に同業のアルバイトをしていたことで、現場の経験や実情を知っていることは就活や面接等では強みになるようですね。またたとえ自分の就きたい職業と同じ職種のアルバイトをしていなくても、アルバイトを通じてやり遂げたこと等、自分で具体的に行動した経験を持っていれば「この人間と働いていける!」と思ってもらえるのではないでしょうか?
身近な”アルバイト”という視点から行動を起こす!
主体性が企業から必要とされている力でありながら、学生自身は不足しているという認識の薄いことが分かりましたか?またこの主体性は特別な団体に所属しなくても、あなたが今行っているカフェでも塾講師でもコンビニでも、どのバイトでも養える力なのです。就活が始まったとき他の学生を差し置いて主体性が発揮出来たり、経験談を語ったりすることが出来れば一歩前へ抜きん出ることも可能です。もう一度アルバイトを見直してみてはいかがでしょうか?
(タイトル画像:NATSUKO KADOYAMA)
- 記事執筆:芹田
無駄に使いがちな時間を、上手に使えるようになりたいです。