- 2025/12/12
あなたにとっての “最高の報酬” は?-時給以上の価値をみつける教育バイト体験談vol.6-
「教育バイトで得られるものとは?」――アルバイトを選ぶ際、報酬の額はもちろん重要です。しかし、家庭教師や塾講師といった教育バイトを経験した学生たちの多くは、金銭的な対価を超えた、かけがえのない“最高の報酬”を受け取っています。
本記事は、t-news編集部が教育バイトで活躍する先輩たちにインタビューし、その体験談から「これから教育バイトを始める人にとってのヒント」を探るシリーズ第6弾。
今回インタビューしたのは、東京大学 工学部4年 大野 文聖(おおの あきと)さん。
個別指導塾と家庭教師の2つの教育バイトで、小学生から高校生まで幅広い生徒の指導にあたってきました。自身の経験則に頼らず、生徒一人ひとりの特性に合わせて柔軟に指導方針を調整する大野さんが見つけた“最高の報酬”とは一体何だったのでしょうか。
- 教育バイトを探している人
・自分の経験や知識を他者に役立てたい人 - ・アルバイトを通して新しい機会や発見を得たい人
- ・家庭教師経験者のリアルな声を知りたい人 など
- 現在教育バイト中の人
- ・指導のマンネリ化を感じている人
- ・生徒の主体性・自律性を引き出したい人 など
中高時代のストイックな学習環境から教育バイトへ
大野さんは材料工学を専攻し、高温の環境でも機能するような「形状記憶合金」の研究に携わっています。これは、飛行機のエンジンやロケットなどでの活用が期待される物質です。またサークル活動では、工学に関連したイベントなどを開催するサークルに所属。小中学生を対象とした2,000人規模のイベント「エンジニアフェスティバル」などを運営するなど、工学の魅力を伝える活動にも積極的です。

大野文聖さん
大野さんが教育バイトを始めたきっかけは「身近な職業でイメージがしやすかったこと」と「中高時代に同級生に勉強を教えていた経験」がありました。
大野さん:「中高時代の6年間は、鹿児島県にあるラ・サール学園で寮生活を送っていました。スマートフォンの持ち込みが禁止だったり、『義務自習』という名の1日3時間の勉強時間が強制されていたり、自ずと勉強に集中しなければいけない環境でした。寮生活は友達との距離が近くなるため、友達に勉強を教えることも多くありました。自作のプリントを作るのが趣味で、勝手にテスト対策プリントを作成し、友達間で共有していたこともあります。僕自身が成績が良かったこともあり、友達の苦手な分野に合わせて良さそうな問題をピックアップするなど、まるで友達の家庭教師のようなことをしていました」
この経験から「そのままアルバイトになるなと感じていた」と大野さんは話します。
「先生、教えるの初めて?」初めてのアルバイトでの緊張と失敗
そんな大野さんは、最初に個別指導塾で小学4年生を教え始めた際に、大きな壁に直面します。
アルバイトを始めるにあたって、塾からは指導を始めるのが初めてであることは生徒に伝えないように、なぜならそれは生徒を不安にさせるだけだからと指導を受けていました。
大野さん:「友達に教えていた経験があるとはいえ、初めてのアルバイトで『報酬をもらっている』という意識が強くなってしまいました。そのため、小学4年生に全部敬語で話してしまったり、何かあるたびに謝ってしまったりと、ひどく緊張していました(笑)」
すると、生徒から思わぬ一言が。
生徒:「先生、初めて?」
大野さん:「なんでわかったの?」
生徒:「いや、そんなに謝る先生は初めてだからね」
「この一言が衝撃だった」と笑いながら当時を思い返す大野さん。その経験がきっかけで生徒との距離感はもっとラフでいいんだと見直すことになったといいます。指導を続けていく中で、生徒と良い関係を築くには、雑談を交えたり、「年の近いお兄さん」として接することの重要性を痛感したそうです。

大野さん:「それからは、最初の授業で生徒の趣味などを聞き、もし知らなければ次までに調べるといった準備をしました。生徒が好きなものを雑談を交えて話すことで、生徒とも打ち解け、生徒の方から宿題の状況や悩みを話してくれるようになりました」
具体例での説明と、勉強へのキャパを考えて生徒が学びやすい環境を
数学をRPGで例えて、苦手意識を克服
大野さんは、数学に苦手意識を持つ生徒は、数学を「自分が現実で使うもの」として捉えることができず「数式を異世界のもの」と感じてしまっていると話します。そのため、教え方にも工夫を凝らしているそうです。
大野さん:「雑談などを通じて、なるべくリアルなイメージを持ってもらうよう心掛けています。例えば、水槽の入水と排水に関するニュートン算の問題を解くときに、ゲームが好きな子には、RPG(ロールプレイングゲーム)に例えて説明しました。
『攻撃してもマイターン回復してくる敵がいたらどうする?』『50攻撃しても20回復される敵を倒すには?』といったように、ゲーム画面上に表示される体力ゲージに例えて説明することで、生徒は『あ、それならイメージできる』と、数学を現実のイメージに落とし込めるようになりました」
抽象的な問題を生徒の身近な体験に置き換えることで、数学への苦手意識を取り払い、自分に身近な問題として捉え直させるという、大野さんならではの教えるテクニックです。
生徒の「キャパシティ」を尊重した学習計画
指導を始めた当初、「生徒のキャパシティ(許容範囲)が見えない」ことが、特に最初の頃は大きな困難だったといいます。
大野さんは中高時代の寮生活の中で毎日3時間の自習を確保させられていた環境にいました。そのため、生徒が「忙しい」と言っても、「これくらいの時間は確保できるだろう」という感覚を持っていたといいます。
しかし、ある高校生を指導した経験から、生徒一人ひとりの「キャパシティ」を理解することの重要性を学びます。
大野さん:「サッカーで高校に推薦入学した受験生を担当していました。授業で出した宿題を終えていないことを不思議に感じていたところ、よく生徒の話を聞くと、最後の試合に向けてレギュラーとして練習に励んていて、今は勉強にそこまで時間を割けないという実情が見えてきました。受験が近づいているからと勉強量を増やすよう強制するのは、彼が持つ背景やライフスタイルを無視した僕自身の『エゴ』だと気づいたんです。『勉強はするもの』という前提を置いてたので、その根幹から捉え直すきっかけとなりました」
この気付きから、大野さんは宿題の出し方を大きく調整しました。部活動などで忙しい生徒に対しては、膨大な演習量を求める指導スタイルから、効率と隙間時間での取り組みやすさを優先するスタイルに。公式の暗記や例題の確認など、比較的負荷の低い学習をメインとし、実践的な演習は授業内で終わらせるなど、生徒の状況に合わせた柔軟な指導に方針を変えました。
「自分のやり方にこだわりすぎない」指導スタンス
個別指導で偏差値を7アップ!
大野さんは、個別指導塾で中学受験を控えた小学生の、算数の模試の偏差値を7アップさせた実績を持っています。
大野さん:「中学の受験勉強を始めたのが遅い子だったので、受験までの残りの期間で、全てを網羅して教えることは難しいと判断しました。そこで、小問集合でのミスを絶対になくすことに特化させ、反復を徹底しました。また、過去問や模試の傾向から、頻出単元を絞って演習を進めました。また、テスト中の時間の使い方に課題があったため、ひとつの問題にかける時間を測ることも行いました」
さらに、大野さんのオリジナリティとして、自作の類題プリントの作成にも力を入れていたといいます。
大野さん:「市販の問題集では、生徒が苦手な問題が揃ったものが見つかりません。授業中、生徒が解けなかった問題をメモしておき、その問題の『設定を変えた類題』を作成し、実際の受験形式に合わせた状態の自作プリントを作成していました」
実践的な演習を積ませる大野さんの工夫は、ほかの生徒にとっても参考になりそうです。

大野さんによる生徒専用の自作プリントの一部
生徒の「崩せない一線」と「考えの道筋」を尊重する
教育バイトを通じて、大野さんの考え方は大きく変わったと言います。
大野さん:「教え始めの頃は、生徒にまるで自分の『コピー』のように同じ勉強法や書き方をさせれば、成績が伸びると思っていました。しかし、教える中で、生徒なりのやり方があることに気づきました。その子にとって『崩せない一線』なのかどうかをしっかり見極めたうえで、もしこだわりがあるなら尊重して活かしていく方向で指導するということが大事だと考えるようになりました」
単語の覚え方一つをとっても、書いて覚える生徒、読んで覚える生徒など、取り組み方は異なります。自分の成功体験をそのまま押し付けるのではなく、生徒の特性を観察し、本人の持つ力を最大化する指導が、大野さんが教育バイトを通して得たスタンスです。

この生徒の内面を尊重するスタンスは、話すのが得意ではない「口べたな子」への対処にも活かされています。
大野さん:「話を聞き出すのが得意なほうだと思います。あまり喋らない口下手な子でも、僕は一旦待つことを心掛けています。こちらが待つことで、じつは何かを喋ろうとしている場合や、問題を解けなかった際も『実はこうしようと考えてて』といった、生徒の考えの道筋が見えてくることがあります。
考えていることが見えてくると、その途中経過を褒めることもでき、対処しやすくなります。表面上は大人しく見えても『何かしらその子なりに考えている』というスタンスで対応しています」
生徒が黙ってしまうとつい、言葉を被せてしまいがちです。しかし「何も考えていない子なんていない」という前提に立って、考える時間を与え、生徒自身の言葉で表現させることはとても大切です。
偏差値アップや生徒の主体的な学びを実現してきたこれらの工夫の根底には、大野さんの「自分のやり方・経験にこだわりすぎない」という指導スタンスが一貫して流れています。
「授業のコマを増やしたい」という生徒の言葉が “最高の報酬”
大野さんにとって教育バイトの“最高の報酬”とは何だったのでしょうか。
大野さん:「教えている生徒からもらった『先生の授業をもっと受けたいからコマ(回数)を増やしたい』という言葉です。以前、部活動のために家庭教師を2ヶ月間の休会することが決まっていたところ、生徒が1ヶ月はやりたいと申し出てくれたことがありました。親御さんの口から伝えられるのではなく、授業をしている最中に生徒本人から言われると、自分の授業が生徒にとって良い体験になったんだという実感が持て、とてもうれしかったです」
自己の経験を成功例として固執せず、生徒の目線に合わせて柔軟に指導方針を調整する「しなやかさ」と、生徒の考えを深く引き出す「傾聴力」の大切さが伝わりました。これらを武器にした、大野さんの経験談はこれから教育バイトを始める人にとっても参考になるのではないでしょうか。
(聞き手・文:t-news編集部)
※掲載内容は取材時(2025年11月時点)のものです
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