- バイトあれこれ
- 2025/02/03

探究メンターは、生徒の「伴走者」。マーストリヒト大学在籍のM.S.さんに聞く、未来を育む仕事の魅力
探究メンターインタビュー:M.S.さんに聞く、生徒に伴走するということ
近年、高校の新しい学習指導要領で必修化された「探究学習」。 自ら問いを立て、情報収集・分析・発表を行うこの学びは、従来の座学とは大きく異なります。
「何から始めたらいいの?」
「どうやって進めたらいいの?」
と悩む生徒も少なくありません。
今回は、生徒の探究活動をオンラインでサポートする「探究メンター」を紹介。
探究メンターとして活躍されているM.S.さん(マーストリヒト大学在籍)に、探究メンターのやりがいや、生徒と向き合う上で大切にしていることを伺いました。
海外大学で学んで見えた、探究メンターという選択肢
探究メンターの話をお伺いする前に、まずは現在大学で学んでいることを教えてください。
法学と聞くと、法律の条文を暗記するイメージを持つ方もいるかもしれませんね。法学部での学びは、「なぜその法律ができたのか」という歴史的背景や、「社会の変化に伴い、法律はどうあるべきか」という未来への問いを深く掘り下げることです。
例えば、フランスの憲法改正で議論された「人工妊娠中絶を選ぶ自由」のように、人権の定義は常に変化し続けています。こうした最先端の議論に触れ、法的問題点を多角的に分析する力を養います。
私自身の研究は、国際法における戦争犯罪と人権法が専門です。直近では「ニュルンベルク裁判から見る戦争犯罪の定義とは」というテーマで論文を執筆しました。
法学で培った「物事を深く掘り下げ、本質的な問いを見つける力」は、探究メンターとして生徒をサポートする上で非常に重要です。 生徒が立てた問いを、一緒に多角的な視点から見つめ直し、より深く面白い探究に導くことができるのかなと思います。
もうすでに論文まで書かれているんですね!どのような経緯で専門を決められたのでしょうか。
小学生の頃から母親に連れられて戦争に関するものに触れる機会が多くありました。『戦争って、国家の圧力によって理不尽で不条理に人の命が簡単に奪われてしまう」と感じ、そういうことの盾になるためにはどういうことができるのかを考えていました。これがきっかけで、法律について学べる法学部を選び、戦争は2つ以上の国が関わる事から「国際法」、直接盾になれる『人権分野』といった方向で専門を選びました。
専門があることはかっこいいです。これは気になっていたのですが、海外の大学へ進学するきっかけとなった出来事があれば教えてください。
きっかけは一言で言うと「自分のニーズに合っていたから」ですね。
実は、海外経験が豊富だったわけではないんです。ただ、人権分野に特化した国際法を学べるEUの大学を見つけたとき、「どうせなら行ってみようかな」と。
日本の大学にも一時期在籍していたのですが、どちらかというと司法試験の合格をゴールにした、実務寄りの学びが多いなと感じていました。私はアカデミア、つまり「研究の世界」で生きていくためのスキルを身につけたかったので、海外の大学を視野に入れるのは自然な流れだったんです。
マーストリヒト大学では、学生一人ひとりを「研究者」として扱ってくれるので、2年生の時点で論文を書くことができました。
海外の大学と日本の大学の違いは考えたことがありませんでした。海外大学を考えている生徒さんに一言ぜひお願いします。
海外大学を逃げだと思わないで、それこそ自分で考えて海外大学を自分の選択肢に入れられることがすごいので自分を褒めてあげてほしいです。あと、意外と海外で一人暮らしも怖くないですよ。
次にメンターについてお伺いしていきたいと思います。Sさんはどのような理由でいつから探究メンターをされているのでしょうか。
2023年から参加しています。
オランダでは学生ビザだとアルバイトが難しいので、オンラインでできる仕事を探していて出会いました。日本にいた頃は塾講師もしていたので、オンライン家庭教師なども選択肢にはあったんです。
ただ、私は「指導」に重きを置いて、生徒を講師が思うように導いて押し上げるというイメージが、少し違うなと感じていて。探究学習は、ゴールが定まっておらず、生徒が自由に選択できるのが魅力です。そんな生徒たちの好奇心をサポートしたいと思い、探究メンターを選びました。
生徒の「問い」をこぼさないキャッチャーになる
探究メンターとして働いていて、意識していることや大事にしていることはありますか。
「褒める」ことと「共感すること」ですね。ただ相槌を打つだけでなく、生徒が何か行動してくれたら「ありがとう、それすごく面白いね!」と伝えますし、悩みを打ち明けてくれたら「教えてくれてありがとう」と感謝を返します。
オンラインでのやり取りは、対面より感情が伝わりにくいので、普段の倍以上は表情やリアクションを大きくするよう心がけています。
褒め方も工夫していて、ただ「すごいね」と言うだけではありません。「こういうことが分かって、こんな展望を持っているなんて素晴らしいね!」と具体的に褒めた上で、「じゃあ、ここはこう考えてみるのはどうかな?」と、次のステップにつながるヒントを一つだけ加えるようにしています。
また、「メンターとしてピッチャーをリードするキャッチャーになる」ことも意識しています。生徒がやりたいことを細分化して、「こういう考え方もあるけど、あなたはどう思う?」とキャッチボールを続けることで、生徒が次の一歩を踏み出せるようにサポートします。
たとえば、「プライバシー権ばかり保護されているから、知る権利も優先されるべきだ」という意見を持つ生徒がいたら、「権利って、どちらかが優先されるものではなく、ぶつかり合う中で妥協点を見つけるものかもしれないね」といった視点を与えます。探究メンターだからこそできる、軌道修正ですね。
探究学習の流れ(問いの作成、事前調査、アクション…)を踏まえ、ゴールから逆算して「じゃあ、まず何をしようか?」と一緒に考えます。生徒が何をしたらいいか分からないときは、何が好きなのかをヒアリングして、行動のハードルを極限まで下げるようにしています。
「本や論文はハードルが高いから、まずはWikipediaをきっかけにしてみて、参考文献をたどっていくのも一つの手だよ」とアドバイスすることもあります。

生徒さんによっては自分の意見をなかなか言えない子もいると思うのですが、そのような生徒さんに対してメンタリングする際に工夫していることはありますか。
先ほどもお話ししましたが、探究活動って、生徒がどこで興味のきっかけを見つけるかわからない、予測不能なボールが飛んでくるようなものなんです。だから私は、キャッチャーとして、生徒がぽろっと言った一言でも絶対に「こぼさない」ように、常に意識しています。
たとえば、生徒が「これを調べたんですけど…これだと…」と自信なさげに話してくれたら、「調べてみて、何が分かったかな?」「予想と違ったなら、どこが違ったのかな?」と優しく問いかけます。
どれだけぼんやりした発言でも、そこに隠れている生徒さんの考えや興味をしっかり「掬い上げる」ことが大切です。そして、その一言をきっかけに、さらにヒアリングを重ねていくことで、生徒さん自身の意見を少しずつ引き出していくようにしています。
僕が生徒だったら、ここまで考えて向き合ってくれたら、たくさん頼ってしまうと思います。今後、生徒さんたちにどのような変化が起きたら嬉しいですか?
探究の授業を通して、「自分の考えや主張を、もっとオープンにしていいんだ」という意識を持ってもらえるようになったら嬉しいですね。
海外に出てみて、何か困っていても、自分から言わないと誰も助けてくれないということを痛感しました。でも、そういう時こそ誰かに相談してみると、意外とすぐに解決するんです。
もちろん、自分の考えをさらけ出すのは勇気がいることですよね。探究メンターという存在自体、生徒さんにとっては「この人は一体誰だろう」という印象もあると思うので、私の方からもっと積極的に「ここは相談してくれていいんだよ」「何を思っているのか、全部話していいんだよ」と伝えていきたいと思っています。
最後に、Sさんご自身の今後の目標ややりたいことを教えてください。
メンターとしては、もっと傾聴力を磨きたいです。生徒さんと話していると、まだ考えを広げきれていないなと感じることもありますし、時には生徒の言葉を跳ね返してしまっているのではと思うこともあって。
生徒が探究に行き詰まる時って、実はメンターの私たちも行き詰まっていることが多いんです。だから、ほんの一言でもいいから、生徒の視点を広げるような、蜘蛛の糸のような一筋の光を見つけられる武器を持てるようになりたいですね。
自分自身の目標としては、まだ少し揺れ動いてはいるのですが、大学院に進学する予定です。アカデミックな視点をさらに深めて、刑法の中で人権がどう扱われるのか、そして刑法が人権の壁としてどう成り立っているのかを学びたいと思っています。
最後に
M.S.さんのインタビュー、いかがでしたか?
探究メンターは、生徒の学びを一方的に教えるのではなく、伴走者として生徒の好奇心や探究心を育む、やりがいのある仕事です。M.S.さんのように、あなたの専門分野やこれまでの探究経験を活かして、未来を担う中高生の「問い」に寄り添ってみませんか?
勤務はオンラインで、空いた時間を有効活用できます。
興味をお持ちいただけた方は、ぜひ下記から詳細をご覧ください。あなたからのご応募をお待ちしています!
探究メンターの募集要項
- ◎勤務地
オンラインのため勤務場所は問いません!全国どこからでもOK
※一部、学校実施のプログラムもあります。
◎勤務時間
週1・1時間から勤務OK!
レギュラーシフト無し!
※毎月公開される勤務案件に対して、ご自身の都合に合わせて勤務が可能です。
◎給与
・時給1,530円~
※交通費全額支給
※昇給あり- ◎応募条件
- ・4月時点で大学もしくは大学院に所属している方