• 大学生活
  • 2025/07/18

読む人にも、つくる人にも“居場所”になる──東大女子が届けるフリーペーパー「biscUiT」

東京大学のキャンパス内や全国の高校で配布されてる、東大女子によるフリーペーパー「biscUiT(ビスケット)」。
今回は、代表を務める森彩香(もり あやか)さん(東京大学文科三類2年)に、「biscUiT」の活動内容から、制作のこだわり、森さんご自身のアルバイトの経験に至るまで、多岐にわたるお話を伺いました。

「大学生活にも少し慣れてきたけど、新しい挑戦にはなんだか不安を感じる…」
「サークルやバイト、何か新しいことを始めたいけど、きっかけが掴めない…」

特に1年生のt-newsユーザーの皆さんの中には、新しい環境に慣れてきたからこそ、大学生活の過ごし方を迷っている人もいるかもしれません。
biscUiTの活動や森さんが経験してきた「初めて」の経験から、これから新しい一歩を踏み出すヒントを見つけてみましょう。
(取材・文=t-news編集部)

森さんのプロフィール

――まずは森さんご自身について、学部や専攻、ご趣味など幅広くお聞かせください。

森さん:東京大学の文科三類2年に所属しています。専攻はまだ検討中ですが、ジェンダー論や文化人類学などに興味があります。なににでも興味を持てるタイプなので、なかなか絞り切れず、今も迷っている状況です。

趣味は、歌うことです。biscUiTの活動に加え、アカペラサークルにも所属し、主にコーラスを担当しています。歌との出会いは小学生の頃に所属していた合唱クラブで、中学・高校では歌うことから離れていたのですが、大学入学後に「また歌をやりたい」という気持ちが強くなり、初めてのアカペラに挑戦しました。アカペラは一人ひとりのパートが決まっているので、自分が間違えると全体のバランスが崩れてしまうことから責任の重さを感じることもあります。だからこそ、各パートがバチッとはまった時の感動は大きいです。メンバーと息が合った時の感覚は、言葉にできない喜びがありますね。

biscUiT 代表 森 彩香さん

「biscUiT」の代表として

――森さんは「biscUiT」の代表を務められていますが、具体的にはどのような役割を担っていますか?

森さん:biscUiTでは、代表と編集長で役割を分担しています。編集長は各号ごとに異なり、冊子の制作まわりの統括を担っています。一方で代表である私は、サークル全体の方針決定、他団体との連携などサークル運営を担っています。biscUiTは駒場キャンパスでの活動が中心のため、代表や編集長は駒場キャンパスを拠点としている2年生が務めています。

――リーダーという立場は、森さんにとって初めての経験ですか?大変なことややりがいなど、ぜひお聞かせください。

森さん:高校時代に部活動で部長を務めた経験はあるのですが、その時は人数も少なく、顧問の先生が主導する形でした。そのため、biscUiTのように自分たちで方針を決めて進めていくという活動スタイルでのリーダーは今回が初めてです。
biscUiTでの活動は、フリーペーパーの発行を通じて、多くの人に自分が関わったものを見てもらえることにやりがいを感じます。その一方で、代表としてbiscUiTのメンバーの意見をまとめていくこと、それによりサークルの方針が決まることに、重みと責任を感じています。代表になってまだ3ヶ月ほどで、現在も試行錯誤の最中です。

――森さんが「biscUiT」に参加したきっかけを教えてください。

森さん:biscUiTでは不定期で中高生向けの特別号を発行し、全国の高校に配布しているのですが、その特別号を私が高校時代に手に取ったことがきっかけでした。
当時の私は、東大を目指そうとは考えていなかったのですが、biscUiTを読んだことで雲の上の存在に感じていた東大生のリアルな学生生活を知ることができ、それが東大を目指すきっかけになりました。受験期に壁にぶつかった時もbiscUiTを読んで励まされ、「今度は自分が作る側になりたい」という思いで参加しました。

東大女子の居場所を創るフリーペーパー

――「biscUiT」について、あらためて活動内容や大切にしている理念などを教えてください。

森さん:biscUiTは2011年に創刊された、東大女子が制作するフリーペーパーです。現在は12名で活動しており、4月と10月の年2回発刊し、学内で配布しています。
biscUiTの活動理念は「東大女子の居場所を作る」です。東京大学の女子学生の比率は、わずか2割程度という状況が続いていて、どうしてもマイノリティになりがちです。
東大女子にbiscUiTを読んでもらったり、biscUiTに所属してもらうことで居場所を作れたらという思いで活動しています。

biscUiTのウェブサイトでは創設者によるメッセージも掲載
https://utbiscuit.xxxx.jp/home/about/


各号のテーマに関しては、編集長だけでなく、メンバーで誌面の企画を出し合って投票などで決めています。
最近は「ジャーナリングのすすめ」や「”普通”を考える」といった、性別によらず全ての人に向けた一般的なテーマも取り扱っています。「東大女子の居場所を作る」という理念から、東大女子ならではの悩みや葛藤を表現する記事作りは、今後も大切にしていきたいと考えています。
年に2回発行されるフリーペーパーは、1冊を作り上げるのにかなりの時間を要しますが、企画から始まり、記事の作成、そしてデザインまで、メンバーが協力して作り上げていきます。特にデザインはbiscUiTの大きな魅力の一つで、毎回デザイン担当がこだわりを持って制作しています。


制作へのこだわり:紙媒体が持つ「特別な価値」

――フリーペーパー制作についても詳しくお聞かせください。読者の対象としては女子に限っているわけではないんですよね?

森さん:はい、学内のすべての人を読者対象としています。「東大女子の居場所になる」がコンセプトではありますが、全体数の少ない東大の女子が「こういうことで困ったり悩んだりしている」ということを伝えたい想いがあります。

――媒体の選択肢はさまざまある中で、紙媒体への想いはありますか?

森さん:biscUiTはウェブサイトにも掲載しているのですが、紙媒体で出すことにこだわりを持っています。制作工数がかかるので年2回の発行にはなりますが、その分、時間をかけて内容にこだわった深い記事を作ることができます。ウェブの手軽さも魅力なのですが、作る側として印刷された冊子が手元に届いた時の達成感は格別です。
紙媒体は、実際にモノとして手に取ることができるので、内容が「自分のものになる」感覚があります。形として残るものを読むことで、内容がより深く心に入ってくる気がします。
個人的にも本は紙で読むほうが好きで、何度も読み返せるのも紙媒体ならではの良さだと思います。「自分だけの1冊」という感覚が、記事内容が読者の心に響くことにつながるのかなと思っています。

また、デザインはbiscUiTの大きな魅力のひとつです。じつは、メンバーの中にはデザインに惹かれてbiscUiTに入ったという人も多いんです。毎回、デザイン担当のメンバーが、記事の内容も汲み取りながらおしゃれで読みやすい誌面を作ってくれているので、本当に感謝しています。
現在は、可愛らしいデザインが軸なので、「女子向けなんでしょ?」という印象を持たれてしまうこともあります。幅広く手に取ってもらいたいという思いもあるので、そのバランスは難しいなと感じています。

アルバイト経験:生徒の学習意欲を引き出した「オンライン家庭教師」

——森さんのアルバイト経験についてもぜひ教えてください。

森さん:はい、現在はパン屋さんでアルバイトをしています。1年生のころよりも授業にゆとりが出てきたので長く勤務できるものを探してこの春から始めました。また、1年生の後半には初めてのアルバイトとしてオンライン家庭教師を始めました。1年生の頃は授業が忙しく、夜の時間帯に家でできるのが良いなと思い、始めました。

——オンライン家庭教師はt-newsでも人気のアルバイトです。実際にやってみてどうでしたか?

森さん:高校受験を控えた中学3年生を2名担当していましたが、対面指導ではない分、生徒がどれくらい理解してくれているのか反応が伝わりにくく、オンラインならではの難しさがありました。
だからこそ、生徒さんが問題を解けた時には「すごい!できてるね!」と意識的に言葉にして伝えたり、逆に分かっていない表情をしていないか画面越しにしっかり観察したり、コミュニケーションの工夫を心がけていました。

――その工夫が実を結んだエピソードはありますか?

森さん:最初に担当した生徒さんが、最初は高校受験にあまり前向きではなかったんです。でも、授業を続けるうちに「もっと頑張りたいから」と、自ら塾に通うことを決めました。最終的には指導を引き継ぐ形になったのですが、後日、「第一志望の高校に合格しました!」と連絡をくれたんです。私の指導が生徒さんのやる気を引き出すきっかけのひとつになれたのかなと思うと嬉しかったですね。生徒さんが目標を達成できたことが何よりやりがいを感じました。


今後の展望

――今後、biscUiTの活動で取り組みたいことをお聞かせください。

森さん:biscUiTとしては、現在30号の制作に取り掛かっています。コンセプトである、マイノリティになりがちな「東大女子の居場所を作る」という軸は持ちつつ、該当しない人たちのことも排除せずに、全ての人に届くような情報発信を目指していきたいです。
東大女子だからこそ感じる悩みや葛藤にも寄り添いつつ、男女問わず、多様な背景を持つ人々にも共感してもらえるような内容を目指していきたいと考えています。この兼ね合いは難しい部分でもありますが、うまく両立しながら、より良い発信方法を探っていきたいです。

記事作り自体もそうですが、メンバーで集まる時の安心感が大きいです。記事作りのために毎週、週1で対面でミーティングし、本郷キャンパスの人はオンラインでミーティングをしているのですが、顔を合わせて、色々話したりするのも自分にとってbiscUiTは「居場所」になっているなと感じます。
最近参加した新メンバーが「他のサークルと違って、一人ひとりが仕事や記事の担当を持っていて、自分を認められている感じが嬉しい」と語っていました。biscUiTは現在のメンバーは多くない分、だからこそ一人ひとりを大切にした活動ができていると感じています。大学には規模の大きなサークルもありますが、気軽に参加できる分、メンバーが多く、自分の居場所を感じづらい人もいるかもしれません。biscUiTだと一人ひとりとして参加できるところが、また魅力だと思います。

――最後に、読者の皆さんにメッセージがあればお願いします!

森さん:まず記事としては、今年の10月に出す今制作している30号が節目となります。この節目だからこそという気持ちで記事を書いているので、ぜひ読んでいただきたいです。
4月に発行した29号も、東大のキャンパス内で設置中です。メンバーがこだわって作った記事がたくさんあるのでぜひ読んでいただけたら嬉しいです。

また、東大女子限定にはなってしまうのですが、活動に参加いただけるメンバーも募集しています。メンバーは通年で募集していますが、4月と10月のタイミングだと、企画を出すところから参加できるので、ぜひ興味を持ってもらえた方がいたら一緒にbiscUiTを作るメンバーになってもらえたら嬉しいです。東大の中で「自分の居場所が欲しいな」と感じている方、誰かの背中を押すようなメディア作りに挑戦してみたい方、大歓迎です!

biscUiTの活動に興味を持った方はこちら!
https://utbiscuit.xxxx.jp/home/join-us/


――本日は貴重な話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

森さんの語りから「biscUiT」はフリーペーパーを発行しているだけではなく、メンバーの一人ひとりが自分の存在を認め合い、支え合える“場”になっていることが伝わってきました。
“居場所”を求めるのは、東大女子に限らず多くの人が共通して抱くテーマです。そんな中で、理念やつながりを大切にする森さんの姿勢は、多くの読者にとってヒントになるのではないでしょうか。

biscUiTの活動はウェブサイト、SNSからもチェック!

・Webサイト:https://utbiscuit.xxxx.jp/
・Instagram: @biscuit.insta
・X:@UT_biscUiT

 

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